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写真屋時代の話。
異動があったり他店に応援に行ったりして、いろんなひとと一緒に働いた。
変なおもしろいひとが多かったと思うけど、一番愉快だったのはタケちゃんという男。
目が小さくて鼻の穴が大きくて髭の剃り跡が青々としていてダサい眼鏡をかけていて果てしなくバカで、私と同い年かいっこ上だったから当時22歳か23歳だったと思うけど休憩時間に『ゴーゴー!ゴジラッ!!マツイくん』(河合じゅんじ)を読むような、女にモテる要素が限りなくゼロに近い男だった。
でも、私はタケちゃんと一緒のシフトが楽しみだった。
まわりの人も、タケちゃんを好きだったと思う。
それは、タケちゃんが底抜けに明るい男だったからだ。
私はその頃、ひとり暮らしをしていて、恋愛面でもいろいろあって、消耗していて、あまりにもバカなタケちゃんにきつくあたることもあった。
でも、タケちゃんは小娘の八つ当たりにおどおどすることもなく、いつも飄々とアホな話ばっかりしていて、それに救われていたのだと思う。